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2006年 01月 16日
「絶望から出発しよう」 宮台 真司著
 朝から暖か。散歩した後、パソ&読書。夕方帳簿付け準備。

 宮台氏の著作を(「絶望から出発しよう」)、初めて読みましたが共感できる部分けっこう多かった(「バカ左翼」や親米愛国への違和感とか実に共感できた)。

 前半は援交やテレクラ、出会い系サイトに現れた社会の構造変化つうか、人々の意識の変化について触れられていて。これもけっこう面白かった。

 何故この本を読もうと思ったかというと、先の大戦敗戦から冷戦終結、イラク戦争に至るまでの日米関係について、突っ込んだ話しが書いてあったので。
 今の日本の対米追従政策は明らかにおかしいし、なぜそうなったのかについて、自分なりに考察しているところにスっと入ってきました。

 田中角栄についての日米関係からの視点による考察が面白かった。ようするに彼は、戦後初めて、アメリカから独り立ちし日本独自の外交、経済政策を行おうとしたために、アメリカから不興を買い、徹底的に叩かれてしまった、と(余談ですが最近橋本元首相も自民党内で地位が低くなってますが、彼も'97年だかに、アメリカ国内に預けてある日本が所有する膨大なアメリカ国債を売りたいことがあるという演説をぶって、アメリカ政府にヒンシュク買った過去があるらしいので…)。それを見て恐れおののいたのか、その後の首相たち(特に竹下以後)は自分たちの利権を第一として、ひたすらアメリカの言うことを聞く大人しい犬になってしまった、と。

 '80年代終わりから、アメリカ政府は自国の経済を守るために、日本に不当な圧力をかけたそうです。いわゆる内需拡大策ってやつですが、日本の得意分野だったハイテク産業、バイオ産業への政府補助をやめさせ、そのカネを土建業に回させた。利権がらみで濡れ手に粟の自民党政治家、官僚がまんまとそれに乗ってしまい、日本は国力を90年頃よりそがれていったとか。そのせいで国産OSであるトロンOS(無料配布を考えていたそうです)はウインドウズに敗れ、バイオはアメリカ、韓国に遅れをとるようになってしまったそうです(当時、アメリカはわざと韓国に半導体製造の技術を教示したそうです。その結果が、現在の世界を席巻する韓国製半導体)。かようにアメリカは自国の利益だったらなんでもやる国だと。たまたま冷戦があったので、反共政策のために日本に利他的計らいをしてくれたけど、アメリカはモンロー主義のころ変わらず基本的に閉鎖的な国で、冷戦が終わった'90年以降、それまでと同じものをアメリカに期待してた日本政府の愚かさが、ここまで国を疲弊させたのでは、というご意見、言い得てるなと思いました。合わせて北朝鮮問題での政府の失態もあぶり出してまして、非常に納得。

 実際'90年代後半くらいから、日本はほんと目に見えてヤバくなりましたよね。自分みたいな政治経済の素人でも明らかにおかしいと感じる状況ですからね。

 そんなヤバい状況を越えるための方法論、認識論が主なテーマですかね。先の大戦をどうとらえるか、ってのがやはり大きなテーマの一つになってますね。
 一種の敗戦ですね、今は。自民党(=冷戦体制に対処するためアメリカによって作られた政党と先日触れた「ならずもの国家アメリカ」にもありました)と官僚によってコントロールされてきた体制では、もうどうしようもないとこまで来てしまったってことでしょうね。
 具体的には官僚エリートや政治家をちゃんとチェックできる市民エリートを育成していくことが、最善の打開策であるとありました。変化をしていくために、まず今のシステムに対して絶望しましょう、ということが主な論旨でした。僕的にはおおいに納得できる内容でした。

by darsana-te2ha | 2006-01-16 18:38 | 日米関係


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