2006年 05月 18日
イラン攻撃が先か、ドル崩壊が先か?-2
「イラン攻撃が先か、ドル崩壊が先か?-1」からの続きです。)

 一方、アメリカのお膝元中南米でも、80年代に席巻した、アメリカ主導による各国の新自由化政策による経済の荒廃によって、各国のアメリカ離れが進んでいます(そのへんのことは「ラテン・アメリカは警告する―「構造改革」日本の未来」という本に詳しいです)。日本のメディア上で報道される情報は、アメリカ寄りの情報で、独立志向を強める各国に対して批判的なスタンスのものが目立ちますが、ネットや書籍等の情報を綜合して判断すると、実際のところは報道されているのとは違ったもののようです。

 先日も、↓こんな報道がありました。現時点では、ブラジルがだだをこねて、ちょっともめてるようですが、エネルギー採掘に関する外資系企業排除の方向性は変わらないようです。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060502AT2M0200302052006.html
ボリビア、天然ガス事業を国営化・半年内に外資を管理下に
日本経済新聞 - 2006年5月3日

 下記にあるように、アメリカ主導の「構造改革」によって苦汁をなめさせられた中南米の人々は、その欺瞞性についてのカラクリに気がつき始めているようです。アメリカがアメとムチで、これらの国をアメリカに有利な形に誘導しようとしても、民主的な選挙で選ばれた反米的な国家指導者が一挙に増えてしまった今となっては、後戻りは難しくなってきているのではないでしょうか。

新しい人類の世紀への岐路に立つベネズエラ

〔Venezuela at the Crossroads of the New Humanity Century Original Article in English/ZNet原文〕
ヴラディミア・ブラヴォ‐サラザー〔Vladimir Bravo-Salazar〕;2005年4月3日より
(以下引用)
2) 旧植民地主義、親植民地主義と新アメリカ世紀プロジェクト(PNAC)

新植民地主義経済の目標は、資本主義体制の外縁に位置する国々を支配することと、彼らの資源を横領することである。支配のための新植民地主義体制はいくつかの段階がある。まず、対象国に全面発展――新植民地主義者の定義によると、主要な先進国家が維持している程度の生活水準に届く発展――は果たせうると納得させる。全面発展を望む国はその開発を成し遂げる為に、IMF(国際通貨基金)と世界銀行から、貸し付けを受け入れることを要請される。次に、対象国に市場の実勢相場は経済学者らが作り出した物ではなく、変えられない自然の法則だと信じさせる。そして、対象国にそうすることによって全面発展は達成されると約束し、自らのもろい経済を世界市場に開けさせる。

対象国は構造調整計画(SAPs)を導入するようIMFと世銀に強いられる。この計画は新しい貸し付けに対し、対象国の経済を信頼できるものとするとされているが、実際には社会構造の破壊しかもたらさない。IMFと世銀の真の目的は、対象国の全面発展を支援するのではなく、対象国を主要先進国の成長に対し供給する為の、安い商品生産者に変える事である。外縁諸国は「開発貸付金」を返す為に、実際の資源を主要先進国にペトロダラーと引き換えに輸出している。この極めて巧妙な事業は、第二次世界大戦の終わりから行われている。IMFと世銀を操るのは米国であり、このことが米国の新植民地主義勢力としての力を強めさせ、世界の覇者にし、その結果ヨーロッパの旧植民地主義者達を凌駕するようになった。ワシントン・コンセンサス(実用的な効果において、ここでは新自由主義と同義)は絶大な支配をし、米国がソ連を圧倒するのを可能にしたひとつの要因がペトロダラーだった。

米国現政権の主要な人々は、新アメリカ世紀プロジェクト(PNAC)と呼ばれる文書の草稿に関わった。この文書は世界に対する覇権を保証するために、米国政府がなにをするべきかという助言を詳しく述べている。欧州連合(EU)は堅実にまとまりある経済的、政治的な集団になりつつあり、彼らの通貨ユーロはペトロダラー独占への脅威になり始めた。イラクは国際用貯蔵を欧州諸国に替え、石油をユーロで売るようになった。多くの人はイラクが侵略された本当の理由のひとつが、ペトロダラーからユーロへの変換だったのではないかと信じている。ブレント原油(Brent)とニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)に張り合うためにイランは現在、ペトロユーロと呼ばれる新しい石油取引の計画を提案している。当然ながら、現米国政府はイランが大量破壊兵器を所有していると非難している。 

新植民地主義者達にとっての主な関心事は、旧植民地主義者達の経済力の潜在的な強まりであり、またペトロダラーに対する脅威である。カリフォルニア、モンテレイに位置するナヴァル・ポストグラデュエイト・スクール〔the Naval Postgraduate School〕のセンター・フォー・コンテンポラリー・コンフリクト〔the Center for Contemporary Conflict〕は、ペトロユーロや、いかなる通貨、またはペトロダラーではない、いかなる形態での貿易も「陰謀説」として退ける試みを幾度か行っている。

ベネズエラは他の外縁諸国(アルゼンチン、キューバ、ウルグアイ)と、ペトロダラーの替わりに、商品を直接交換し合う貿易取引を組んだ。この代替案は外縁諸国に実質的で、維持できうる発展を促進する貿易設立の基になりうる。

(中略)

4)人道的経済 対 新自由主義

世界の資本主義体制にとって、人口増加と減りゆく資源は悪い前兆である。この体制が繁栄するためには継続的な成長は必須であり、継続的な成長には限りない資源が必要である。資本主義体制は、企業自由貿易と「公開市場」という新自由主義の理念によって運営されている。成長という幻想を作り出すために、あらゆるものは商品とみなされ(ここには技能を持った、そして熟練した人材も入る)、最安値入札者に外部委託することで無理やり安くされていく。この「成長」によって利益を得るのは外部委託によって儲ける企業と、その企業の大部分の資本を所有するほんの一握りの裕福な個人だけなのである。これ以外の人々の手に入るのは、しだいに少なくなる所得なのだ。新自由主義の理念による資本は、大富豪と超貧民の間の維持不可能な両極を作り出し、主要な国々の人々すらこのことに気づき始める段階にまで達している。

新自由主義モデルが維持できないという証拠は、資本主義体制に位置する外縁諸国に見いだせる。その国々は新自由主義構造調整計画(SAPs)がもたらした、社会と経済の破壊をしめす「鉱山のカナリア」なのだ。アジアの虎(韓国)から、アフリカ(ソマリア、モザンビーク)、南米(アルゼンチン、ペルー、ブラジル、ボリビア)、それに幾多の東欧諸国までいくらでも例はある。社会の両極化を広め, 社会的動揺に対する多くの死者をだした暴力的な抑圧をもたらしたSAPs(80年代後半から98年まで適用された)の結果に苦しんだ後に、ベネズエラの人々は眠りから覚め、民主的、革命的な変化に向けて進みだした。
(以上引用)

このほかにも下記に、関連した記事がありました。
■今週の戦略視点 
石油戦略でドル覇権崩壊か 2006年5月15日(月)


IMFが誘導するドルの軟着陸
2006年5月2日 田中 宇


 「イラン攻撃が先か、ドル崩壊が先か?-1」にも書きましたように、ロシアによるエネルギー市場のドルから他通貨へのシフトはこの7月に始まります。上記ボリビアは年内にはシフト完了のようですし、反米姿勢を強めるベネゼエラのチャベス大統領もイランとともに石油貿易決済をユーロにシフトすると一昨日(5/16)発言したようですし…。産油国の決済のドルからユーロへのシフトが進めば、ドルの暴落のリスクが益々高まるでしょう。おまけに、とどまることの知らない中東での戦費増加です。アメリカの財政赤字は早急に改善しそうにありません。すなわち、出るものはさらに出続け、入るほうは漸減、という状況が露になりつつあります。

 以前にもちょっと書きましたが、今後1~2年で世界情勢は大きく変わっていくかもしれません。まさに'89年の冷戦終了に続く、次の大変化の波です。
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by darsana-te2ha | 2006-05-18 01:06 | 世界情勢


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