2006年 09月 15日
人類史的必然としてのイスラエルとアメリカの敗北。-2
「人類史的必然としてのイスラエルとアメリカの敗北。-1」からの続きです

 引き続き山手圀弘氏による90年代に行われた講演からです。
 イスラムがなぜ今勃興してきているか、人類史的意味について述べられております。
 当然その次にやってくるのは、経済原理、社会原理の変革で、今起こりつつあると思います。それを非常に恐れたのがソ連であり、アメリカなどの西欧社会ですね。イスラム原理主義が入ったら困るという恐れがあって、アフガニスタンに侵攻したらしい。もうあと戻りができないほどにソ連社会が分解し始めている引き金は、イスラムなんです。ソ連社会の人口の1/4がイスラムですから、もうどうしようもない状況です。中近東、アフリカ、そして今はイスラムの人たちがどんどんヨーロッパになだれ込んでいますから。イスラム文化の影響は、西ヨーロッパまで広がっているという状況です。それが今度のイラク問題に現われている。アメリカを含めた近代西欧社会の中でのイスラム革命ですね。イスラム革命というのは、ルネッサンス以降、特に強く現われた経済原理や科学技術の原理で編成された近代西欧社会の、もうひとつの変革なんです、次のステップへの。本体論的なオートノミー(=原理/当ブログ管理者)に移る。そう見ないと理解できない。
 そこへもってきて今度は同時に南北問題があるでしょ。東西関係が未来までシフトするわけですね。米ソの関係が融和したのは、実はイスラムの問題が出たからだと考えられますね。次の宗教改革の余波が、次の経済革命、産業革命、社会革命、文化革命の方向へ伸び始めていますからね、東西関係が。もう米ソ対立と言ってられない。ほとんど同じ原理ですから。たとえ社会主義、資本主義といっても、所詮、経済原理はほとんど同じですからね。賃金、地代、利子の経済原理は、同じオートノミー(=原理/当ブログ管理者)。科学技術も同じ思想です。ところがイスラムとなるとちょっと違うんですよ、原理的に。同じ延長線上だけど、原理的にはどかっとオントロジー(=主客一如/当ブログ管理者)に向かってしまう。インシャラーになっちゃうわけです。宇宙に従いましょう、ヒューマニズムじゃなくてユニバーサリズムになりましょうというんですから、ソ連もアメリカも恐ろしいんです。これがフセインの自信なんです。論理的にそれを解釈しているわけじゃないんですけど、直感的な自信でしょうね。彼らは厳密な形では表現できないでしょうけれども、神と盛んに言っている。社会主義者でありながら、奇妙なことに無神論に近い社会主義でありながら……西欧にはキリスト教の社会主義もありますが……この頃フセインの言ってることは、神によって守られているとか、神の代理で動いてるという言い方でしょ。これから21世紀は、宇宙原理で動くということです。だから21世紀は自分たちの世紀だという自信をもってきている。これがソ連、アメリカには恐ろしい。自然法則以外何もないんですからね。
 あとは真性オートノミーと疑似オートノミーの別を取り上げますけど、そのことを理解しないと、これからの企業も市場もどう動くかは見えてこない。社会開発がどうなるかも、見えてこないんですね。あれは、単なる中近東の紛争の問題じゃないんですよ。今、ものすごい地球上の大変革が行なわれている。あれは別にフセインの力ではなく、彼はただ引き金を引いただけです。そこに南北問題も加わるから、さらにわかりにくい。フセインの自信というのは、軍事的に完全に粉砕されても……確かに近代科学技術の点では格差がありますから、アメリカが誤算したように数日で終わってしまうような勢いでしたね。しかし完璧に軍事的に制圧されても、フセインは自信をもっている。なぜならば、人間の生命力は、軍事では抑えられないことを知っていますからね。
 ベトナムもそうでしたけど、ベトナムではシャングルの力と人間の力が一体になって、アメリカは泥沼になったでしょ。どんなに枯れ葉剤を使っても、ナパーム爆弾を使っても、結局はゲリラに対抗できなかった。砂漠だから隠れるところがないといっても、砂漠はまた自然のオートノミーをもってます。ジャングルのオートノミーとは違う。近代のハイテクも受けつけないような、ジャングルとは異質の、砂漠のオートノミーをもっています。これから自然の力をたっぷりと思い知らされる。そのことをフセインは知ってるんです。アラブの現地の人間はみんな知っている、何千年、何万年とそこに生きてるんですから。フセインが誤算してるとアメリカは言っていますが、我々の目から見るとそれは逆で、アメリカの誤算のほうが大きいんです。昭和20年代からアラブやユダヤ、イスラムの団体をつくってつき合ってきた経験から言っても、明らかに誤算しているのはアメリカです。
 ベトナム戦争の時にも、偶然私はベトナムの人とのつき合いをもってましたから。グエン・フーというベトナム解放の人民戦線の代表者がいますが、その日本代表であったグエン・リー・ネップという人とも知り合いだったので、ベトナムの細かいことも、逐一わかった。アメリカが介入する以前から、フランスと戦う以前から、ずっと見てきたんです。いかに近代国家は誤算するか。
 フランスも簡単に誤算して退いた。アメリカもベトナムに入っておそらく誤算するだろうと我々は思っていたんですが、やっぱり誤算して撤退。それと同じ感じが、今度のアラブにはあります。アラブの場合はベトナムよりさらに領域が広いし、複雑です。イスラム全体ですからイランも巻き込みますし、アフガニスタンも、ソ連や中国のイスラム圏、インドネシア、マレーシアのイスラム圏もですから、大変なことになる。アメリカは、なぜそんなばかげたことをやるのかと思ったんですが、よく考えてみると、やらざるを得なかったのかもしれませんね。だって、もしイスラムの原理が、一番西欧に近いものではあっても、近代西欧社会、近代の経済、文化の原理を変えていった時には、ソ連もアメリカもヨーロッパも、今の形は完全に崩壊するんですよ。あまり急速に崩壊させられては困る、ということもあったと思います。
 ですから当然、革命に対する反革命のようなものが起こりますよね。今、ソ連のゴルバチョフが……彼もユダヤ人ですが……ソ連でもすごい変革が起こったら困るから、保守のほうへ引いているでしょ。古典的な社会主義のほうへ引き戻そうとしている。あんまり早い変革は崩壊につながるという危機感をもっています。これはアメリカもECも同じです。さっき言ったようなオントロジーの方向へ突き進むにしても、あまり早くイスラム革命が起こったら困るんですね。ですから、相当面倒なことになると重々わかっていても、やらざるを得なかったという側面はあったんでしょう。南北問題まで入ってくることがわかっていたら、本当はやれなかったはずです。南北問題が入ると、今度はイスラムだけじゃなく、第三世界全体を敵にまわす可能性がある。もうそういう雰囲気がありますから。ベトナム戦争どころじゃない。地球全体に拡大する状況になってしまう。もうそこへ入ってるんです。


 同じ山手氏のサイトより、道教についてのお話です。やはり、人間や自然の本音により近い道教思想の優位性について述べられています。

 さらに郷村という場合、今マレーシアとかシンガポールへ行ってもそうなんですが、中国社会では郷村=幇で生きてますから、彼らが根っこにもっているのは、孔子の思想、官吏の登用試験に出てくるような政府を構成する人たちの原理です。しかし、一般の人たちはそうではない。老子、道教なんです。東南アジアに行っても、華僑の人のいる所には道教寺院があるでしょ。そこでさまざまな祭りがあり、生活様式が出てくる。そういう意味では、郷村自治運動に基盤をおいている中国共産党の思想基盤の中には、表に出してないけれど老子の思想がある。民衆の郷村自治の哲学のようなもの、これも本体論、オントロジーなんです。老子の思想は、日本人なら誰でも知っているようですね。太極の思想であるとか、“道”の思想です。宇宙空間全体を、インドでブラフマンと言っているのと同じものを基盤として、すべてのものがそこから流れ出てくるという思想です。自然界も人間も全部そうですから、それによって自然に物事を変化させていく、自然的な変革……その思想が老子ですね。これは、西欧的な、理知によって計画的に編成していく社会主義とは全然違う。
 社会主義は明らかに個の思想です。ヒューマニズム。サルトルも「共産主義とはヒューマニズムなり」という言い方をしていますよね。言い換えれば、個の思想であり、個人の人権を社会的に合理的に編成した時には、社会主義、共産主義になる。しかし道教とか老子の思想を社会的に、あるいは自然界にまで当てはめて広げていった時には、西欧的な社会主義、共産主義にはならない。別のものなんです。このことは、まだ日本では理解されていないですね。中国は違うんですよ。ベースが全然違う。ただ第三世界の人たちは、何とはなしにそれを理解している。ですから未だに、毛沢東思想は広がっていますね。これは21世紀に向かってこれから出てくる、第三世界と第一、第二世界との南北問題、南北のクロスオーバーとフュージョン……衝突と交流を引き起こす南北のエンカウンターです。
 東西のエンカウンターは片づいたように見えて、今度はイスラム原理によって、さらに新しい東西問題が今現われていますが、南北の問題はこれから出てきます。その引き金が今、イラクで引かれている。あれを見ていてごらんなさい。そのうちに南北問題が、全地球的になります、本格的に。


 ここにきて急激に現れてきた、アメリカの経済軍事面での失墜は、歴史の必然なのでしょう。ユダヤ・キリスト教的な個の本音(副島氏のおっしゃるラチオの思想)から、自他一如的な場の本音(自然と一体になった肉体的な本音)へと、今、世界がシフトしているからではないでしょうか。
 同時に個の思想が持つ欺瞞性があらわになってきたように見えます。欧米の理知的な個中心の思想によってもたらされるものは、共産主義であれ資本主義であれ、ネガティブな意味での格差や疎外でしかないことが、近現代史の現実の中で証明されてしまってますから。
 確かに日本の社会の進化段階は、欧米より遅れているのでしょう。しかしそのことは決して悪いことでないと気付くべきかもしれません。いろんな社会的発展段階が世界に並立してることに目を向けるべきでしょう。そしてその中で私たちは何が可能なのでしょうか?

 ふりかえって我が日本の小泉、安倍両氏による更なるアメリカ従属は、アメリカご臨終の引き延ばしにはなりますが、ご臨終そのものを防ぐことはできないように思われます、というよりヘタすると日本がアメリカ(+イスラエル)との無理心中の憂き目に会わされかねませんよね。
 アメリカとの心中回避のためにも、また米中両国へのけん制のためにも、今後日本はロシアとの関係が大変重要になってきそうですけど、如何でしょうか。日露両国って不幸な過去はありましたが(まあ元をただせば英米にけしかけられたって面も強いのでしょうが…)、得手不得手を互いに補完しあえる関係に見えるんですよね。(太字=当ブログ管理者)

「人類史的必然としてのイスラエルとアメリカの敗北。-3」へ続く。
 ↑中国のことを中心に続きを書く予定でしたが、もう少し関連情報について調べてから書こうと思います。すいません、しばらく間を置くことになりそうです。
 とりあえず、今中国について考えているのは、8月末に書かせていただいた、こんな感じのことです。
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by darsana-te2ha | 2006-09-15 01:32 | 世界情勢


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