2006年 10月 09日
北朝鮮もアメリカも困ったものだ。
 先だっての田中真紀子氏による、国会での発言、特に北への発言について疑問視する投稿が拙BBSにありました。以下は、その書き込みに対する返答をもとに書きました(田中氏、安倍首相のどちらかを擁護、批判するといった内容ではありません)。

 僕個人的には北朝鮮の拉致も、核実験も肯定はしませんが、北がなぜ核実験というバカを今やるかと言えば、アメリカと直接対話を望んでいるからでしょう。しかしアメリカはなぜそれを蹴るのでしょうか? 東アジアの不安定のために北が必要だからだと思われます。
 アメリカ政府は北への先制攻撃はしないと再三発言しているようです。しかし、なぜ北を挑発、締め上げる制裁を続けるのでしょうか?
 日本では今、来年度予算でのMDシステムの購入や在日米軍再編の正式決定の直前です。アメリカによる締め上げから逃れるための“恫喝外交”の手段である核実験やミサイル発射といった北の“脅威”が、日本の国会の論戦や世論形成において、MD配備推進の予算決定の後押しとなるでしょう。
 日本のお金がアメリカ軍産複合体にガッポリ流れるうえ(そのうちの一部は三菱重工などといったアメリカの下請けとして兵器を開発製造している日本の軍需関連企業にバックされてくるのでしょうが)、配備されるPAC3ミサイルはアメリカの仮想敵国である中国も射程に入るそうです。もし、中国と日米台が戦争になった場合、ミサイル発射基地となる日本が中国の攻撃目標になるのは、目に見えています。ミサイルが届くまで時間のかかる米本土より、まず日本を叩いてくるというのが戦略的に自然なことではないでしょうか。
 ネオコンアメリカが台湾独立にからめ、極東で中国“民主化”戦争を仕掛けるのは上海万博後の2010年代初頭と言われています。


「哲学なき弾道ミサイル防衛」
より。
 この弾道ミサイル防衛で、誰が利益を得、誰が損をするのかを考えましょう。

 アメリカの軍需産業は儲かります。冷戦終了後、大きな戦争も緊張構造も無く、倒産と合併が連続していたことを考えれば、軍需産業にとって無限競争はむしろ望むところでしょう。

 ロシアにとっても歓迎すべきことでしょう。ロシアは既に多弾頭誘導技術を完成させています。今開発している弾道ミサイル防衛ではロシアの多弾頭誘導弾道弾には通用しません。弾道ミサイル防衛のための国費の乱費によるアメリカの赤字増大と、それに伴うアメリカの国力の相対的低下は、多極構造の一角を狙うロシアには望むところというものです。ロシアの軍需産業にしても中国などの外国が欲しがる兵器が増えるのは喜ばしいことでしょう。

 反米テロリストも喜ぶかもしれません。「テロリストの攻撃による脅威に対抗するための配備」という報道を信じれば、自分達とはまったく違う次元の軍備でアメリカに浪費させることができたのですから。経済的打撃も彼らの望むところです。

 中国は少しは嫌がるでしょうね。対策のための軍事費が増大しますから。もっとも軍事的には中国側の弾道弾近代化のスケジュールが早まるだけのことでしょう。結局、嫌がらせ程度にしかなりません。嫌がらせが目的だとすれば、随分高い買い物というものです。

 そして、アメリカという国自体とその同盟国にとっては大きな損失となるでしょう。 短期的にはアメリカの軍需産業は息を吹き返すでしょうし、軍需産業が基幹産業といってもいいくらい軍事の経済規模が大きいアメリカの経済には大規模公共事業のような効果をもたらすでしょう。
 しかし、長期的には赤字増大によるドルの信用低下や費用捻出のための社会保障の切り捨てなど、アメリカ経済の基盤自体やアメリカ国民の生活を損ないます。
 同盟国にしても実用性が怪しい兵器に高い金を支出するのは思案どころです。
 カナダが弾道ミサイル防衛から手を引いたのを見れば判るように、かえってアメリカ中心の連合の結束を乱す結果になるのが関の山。
 それに、実用性が怪しいと解っていてもアメリカとの力関係から弾道ミサイル防衛を導入せざるをえない同盟国では、損害を受ける人を中心に、アメリカ及びアメリカに追随する政府に対する悪感情が蓄積する可能性があります。
 例えば我が国。弾道ミサイル防衛のための費用負担、一兆円を捻り出すために、財務省はあちこちの予算を締め上げています。費用削減はそれに妥当性があれば結構なことですが、近頃の締め上げは予算を削るという結論があって、それに合わせて理由を探しているといった類のものにしか見えません。
  人道支援等の国際貢献で活躍している自衛隊も、活動範囲が広がっているにも関わらず、人員や装備が削られては、国に裏切られた思いをしても仕方がないというものです。
 防衛予算が削られ、相対的にアメリカの軍需産業に仕事を取られる防衛産業も困ります。「アメリカは自国の軍需産業救済のために同盟国の防衛予算にまで手をつけようとしているのではないか」と感じる人もいるかもしれません。
 だいたい、今の弾道ミサイル防衛は、SLBMのような潜水艦から発射される弾道弾や偽装漁船から発射される弾道弾のような近海からの攻撃には役に立ちません。予算捻出のために対潜哨戒機の数を減らして対潜能力を減らすようでは、弾道ミサイル防衛の目的を考えれば片手落ちというものです。本来の目的が表向きの目的と違うというのなら別ですが。
 結局、弾道ミサイル防衛はアメリカという国のためにもアメリカ国民のためにもなりませんし、アメリカと同盟している国のためにもなりません。(太字=当ブログ管理者)

 先だってホワイトハウスで横田夫妻に会ったブッシュ大統領が、拉致問題解決協力を約束してましたが、あれは多分ポーズでしょう。北東アジアの不安定要素としての北の体制維持こそアメリカの国益なのですから。森田実氏も指摘していましたが、北東アジアが安定しEUのように経済的、政治的に団結してアメリカに対抗すれば、アメリカの覇権が急速に弱まるだろうからです。

 拉致被害者の解決が遅れる大きな原因の一つがそんなアメリカの思惑が大きいようです。北とのパイプがあり電撃的に訪朝し、しかもブッシュ大統領とも良好な関係にあった小泉前首相ですら、北の問題解決に向けてアメリカ政府を説得できませんでした。アメリカの国益を損なってまで、拉致問題を解決できる立場に「属国」日本は無いのだと思います。又それをハッキリ言わない、政治家、官僚、マスゴミの鉄の三角形こそ糾弾されるべきでしょう。
 横田夫妻も、そのへんおわかりになってらっしゃるかどうかは存知あげませんが、北の不誠実さばかりでなく、アメリカやそれに追随する日本政府の姿勢にまで踏み込んでいっていただきたいものです。
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by darsana-te2ha | 2006-10-09 01:01 | 世界情勢


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