2007年 06月 17日
ザビエルをはじめとしたポルトガル宣教師たちに対する素朴な疑問。-2
 (ザビエルを初めとした宣教師たちに対する素朴な疑問。-1からの続きです。)

 もうひとつ、ポルトガルはスペインが南米で行ったような極端な暴力を東アジアで行わなかった、とありましたが、これには戦略的な意図があったようです。再度の引用になりますが

O∴H∴西洋魔術博物館
「隠れ切支丹 : 知られざる西洋秘教伝統」
より
 ザビエル来日当時、幸か不幸か日本は戦国時代であり、戦国大名が大童で血刀を振り回していた。五千から一万の兵員動員能力を有する大名も少なくなく、この状況下ではマラッカからの兵員海上輸送による日本の軍事制圧は不可能であった。むしろ大名たちをキリシタンに入信させることによる比較的穏健な文化侵略が是とされたのであり、以降イエズス会は有力大名に狙いを絞るトップ交渉をそつなく行っている。

 マラッカやゴアのような戦略的な拠点から遠かったせいか、北東アジアでポルトガルは、インド洋でのように軍事的に絶対的な優位を保てなかったようです。実際に1521、1522年に明(中国)にてっぴどくやられてしまったようですし。そのような中で上記のような有力大名を懐柔することを中心とした戦略があったんだと思います。
 また基本的にどのような考えでポルトガルが東方へ進出して来たかは、下記のようなことでしょう。これはポルトガルのみならず、後に日本にやって来たスペインやオランダも同じようなものだったと思われます。


「トメ・ピレス『東方諸国記』を読む」
より
 トメ・ピレス(引用者注:ポルトガル王室の公式使節として中国を訪問した薬種商人。「東方諸国記」の著者)にあっては、世界はポルトガルのものであり、自分たちのアジア進出はアジア征服以外の何者でもなかったこと、その事業は主イエス・キリストの御名において行われ、カトリック教を昂揚させ、イスラーム教を滅ぼすことにあるとしている。
 トメ・ピレスは、この書をすでにみた目次にある地域や人々がポルトガル王の征服の対象となるとして、書き記したといえる。この点で『東方諸国記』(トメ・ピレスによる16世紀“東方”の見聞記)は征服対象国の要覧といえる。

 上記のようなことが、信仰におけるある種の象徴としてではなく、軍事的行動を伴った上で現実に行われたわけです。

 またポルトガルによるキリスト教への改宗の仕方がスペインとは違ってた、とのご指摘もありましたが、イエズス会の進出が強まったことで、暴力的な改宗も辞さなくなったようです。ちょうどザビエルが日本にやってきた頃から、そのような変化が始まったようです(ザビエルもイエズス会の初期の重要なメンバーであったようですが…)。

亜細亜大学国際関係学部HP内
「ポルトガルとアジア(2)」
 増田義郎より
副王アルブケルケ(引用者注:ポルトガル人の植民地征服者。インドでの植民地総督にあたる)は,ヒンドゥー教徒の寺院や礼拝を禁止せず,ただサティー(未亡人の殉死)を禁じたにすぎなかった.それは,彼が,グジャラットのヒンドゥー商人や航海者の力を借りなくては,インド西部およびペルシャ湾のイスラム商人と取り引きできないことをよく知っていたからである.
 この状態が大きく変化したのは,1540年以後だった.トリエント宗教会議(1545―63年)の決定,および1536年の異端審判所の設立が,アジア布教におよぼした影響は大きかった.ポルトガル本国における異端取り締まりが強化されただけでなく,海外植民地における“異教”に対する王室の態度も一変した.(ポルトガル人が来る前から独自にキリスト教を信仰していた)アビシニア教会やインドのトマス派キリスト教徒は異端と烙印を押され,ポルトガルが支配を確立した地域,とくにインド西海岸やセイロン島低地部のポルトガルの要塞周辺の土地では,強制的な改宗がおこなわれた.1540年にはゴアのヒンドゥー教寺院が破壊され,ヒンドゥー教,イスラム教,仏教などを礼拝することが禁ぜられたが,逆に改宗者を優遇する政策も積極的にとられた.1542年にイエズス会士がゴアに到着し,新しい方法によって布教を開始したのも,この動きの一環であったと考えていい.1550年から1750年までのアジアにおける布教は,主としてイエズス会の手でおこなわれることになった.....
以上の変化に関しては,1567年にゴアで開かれた宗教会議が重要であり,この会議はトリエントの宗教会議の決定を受けて,同会議で規定されたローマ・カトリック教以外のすべての宗教は本質的に有害であるとの見解のもとに,ポルトガル王室はローマ・カトリック教を布教する義務があり,そのため国家の世俗的な力は教会の精神的な力を支持すべきであるが,布教は強制的手段によってはならない,という基本方針を定めた.
しかし,トリエント宗教会議の方針を,まったく暴力なしに実行することはそもそも不可能だった.ヒンドゥー教もイスラム教も,思想と神学にうらづけられた手ごわい宗教だった.力なしにこれを退け,抹殺することは不可能だった.教会は,1567年ポルトガルのインド副王が公布した政令によって,最初から暴力的手段を用いて現地宗教の抹殺をはかった.すなわち,すべての異教寺院の破壊,異教の祭司,神官,教師などの追放,『コーラン』など異教の聖典の焼却,儀礼的水浴の禁止,キリスト教以外の結婚式や行列の禁止,イスラム教から仏教,ヒンドゥー教への改宗,またはその逆の禁止,一夫一婦制の強制などがつぎつぎに政令によって布告された.キリスト教徒は異教徒といっしょの住居に住んではならず,彼らと商売取引以外の関係をもつことは許されなかった.ヒンドゥー教徒の家族の名簿が作られ,50人ずつ1週間ごとに教会か修道院へ行って説教を聞かなくてはならなかった.これらの禁令は,宗教会議が開かれるごとにきびしくなり,やがてイスラム寺院の破壊もはじまって,そのあとに教会や修道院が建設され,寺院の財産もそれらに移された.


NHK「その時歴史が動いた」番組紹介
「それでも民は祈り続けた
~島原の乱・キリシタンの悲劇~」
より
かつて島原はキリシタン大名・有馬氏の領国。領主の庇護のもと、宣教師の積極的な布教が行われ、戦乱の傷跡に苦しむ民衆は新しい宗教に救いを求める。しかし一方では、キリシタンは、仏教など“異教徒”に力づくで改宗を迫っていた事実が明らかになってきた。こうした改宗活動を扇動していたのが宣教師だった。イスパニアやポルトガルなどカトリック教国は、世界各地で植民地政策を進めていた。両国から資金援助を受けていた宣教師たちは、その戦略の遂行に大きく関与していた。島原の宣教師も有馬氏に交易で利益を与える一方、暴力をも容認する改宗活動を後押ししていた。
カトリック教国の侵略意図を知った幕府は禁教令を発布し、キリシタンに厳しい弾圧を行う。しかし、国家間の思惑など知らないキリシタンは簡単には信仰を捨てられず、ついに信仰の自由を求めて立ち上がる。幕府は、キリシタン蜂起の連鎖拡大と背後にあるカトリック教国の援軍を恐れ、12万人という大軍で徹底鎮圧を決行した

 上記のように、1545―63年ゴアでの宗教会議がきっかけで、異教に対する高圧的な布教が本格的に始まったようですね(ザビエルが日本にやってきたのは1549年です)。
 そして、16世紀から19世紀までの間に、ポルトガルも含めた欧米列強によって東アジアがどうなったかは歴史が語ってます(ただ明治以降、欧米の帝国主義に倣った日本が、やはり同じような海外膨張政策をとって東アジアを支配してしまったことも又事実ですが…)。切支丹禁制や鎖国をしていなければ当然日本も、その流れに巻き込まれたはずです。
 またポルトガル人が当初日本に売り込んだものは武器です。今風に言えば「死の商人」だったわけです。また日本の銀や金が目当てだったようですが、もし仮に伴天連追放令が無く貿易が続けられたとして、その後、日本国内の金銀が枯渇したり他のヨーロッパ列強と金銀貿易の利権の取り合いが始まっていたとしたら、ポルトガルがそれまでのような紳士的な態度を、日本に対して取り続けたかどうかは大いに疑問だと思います。

 性善説で欧米人を捉えるのもよろしいのですが、それって今日び跋扈してる「親米“ポチ”保守」にもつながる、欧米の言うことやってることは何でも正しい、とする日本人のナイーブなお人好し、言い換えればある種の愚かさ、に通ずるような気がしてしょうがありません。
 私個人的にはキリスト教系の幼稚園に通っていたせいで、聖書や賛美歌には幼い頃から親しんできました。しかし、その内容がいくら素晴らしいからといって、暴力を持ってまでしても他者に押し付けるというのは如何なものでしょうか? しかも、それが相手の持つ物質的な富を収奪することとセットになってしまっているのです。これではキリストの唱える謙譲の精神からも大きく外れてしまっています。
 ザビエル書簡集(全部読んだわけではありませんが)に通底しているのは、自分(=ザビエル)はキリストの教えを知っていることで高いところに立ち、一方キリストを知らず低きところにいる日本人を助けるという姿勢です。そこには日本の風土に根ざした日本人の伝統的信仰に対して同じ目線からの理解というものが感じられません。あくまでも自分(=ザビエル)が教師であり、日本人は生徒なのです(例は適当で無いかもしれませんが、同じような姿勢は、先日の外資ファンド・スティール・パートナーズの若い社長の記者会見にもありましたね)。
 今回はザビエルを初めとしたポルトガルの宣教師を例にしましたが、「キリスト教の福音を世界に伝える」という大義名分のもとで、欧米がこの500年、世界で何をやってきたかを多くの日本人が冷静な目でもっと知ったほうが良いように思いますが、いかがでしょうか。

(太字=全て引用者)

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by darsana-te2ha | 2007-06-17 00:25 | 世界情勢


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