2007年 09月 01日
「価値観を共有する日米関係」の欺瞞-本論-3
  「『価値観を共有する日米関係』の欺瞞-本論-2」からの続きです。

 以前、キヤノンのコピー機「保守費」の理不尽や、アメリカという国家の特殊性についてその著書「暇つぶしの時代-さよなら競争社会 」を引用させていただいた橘川幸夫氏の、別の書籍からの引用です。日本とアメリカの国としての成り立ちや根本的なところでの価値観の違いについて、小説形式で複数の人物に語らせる手法を使って上手に解き明かしておられます。

「やきそばパンの逆襲」 橘川幸夫著 2004年河出書房新社刊 p73~76より

 まず、明治以来現在まで、近代化を進めていく中での日本に、少数の“国際派”エリートと、多数の”民族派”大衆との対立という大きな構造があることから入っていきます。
「小泉政権というのは、福田派(自民旧清和会→清和政策研究会・町村派/引用者注)の怨念が田中派(自民旧経世会→平成研究会・津島派/引用者注)の利権構造を破壊しようとしてることだな。これをもっと大きな枠組みで見ると、明治以来の国際派というエリート官僚たちと、大衆的な農民を地盤にした民族派との対立構造があるんだ。国際派の背景にあるのはアメリカであり、メッセンジャーが竹中平蔵なわけだ。国際派は一貫して西洋近代思想を日本に導入することによって、日本の大衆意識を変えようとしてきた。」

(中略)
「(福田派というのは)岸信介から佐藤栄作につながる、東大卒のエリート官僚組織の系譜だな。田中派は、田中角栄がシンボリックだけど、叩き上げの土着民族派だ。竹下登にしても、小沢一郎にしても、私学出身が多い」
(中略)
「……。エリートは競争社会の勝利者だから、競争が好きなんだ。企業を作って、企業同士が競争する社会を目指したわけだ。だけど、一般大衆はアジア人だから、馴れ合いや談合のようなコミュニティ尊重型の体質なわけだ
「日本の近代社会というのは、常に少数の国際派エリートが大多数の民族派大衆を支配するというピラミッド構造だったんだ。官僚の中でも、少数のキャリアが多数のノンキャリアを支配してるだろう? これは国家権力の内部だけでなく、例えば左翼運動にしても、国際派コミンテルンと大衆派の労農派の対立という構造があった」
「エリートが外国の事例や思想を勉強して、あたかも自分の考えのように語るのが近代日本のインテリの本質だからな」

 以上のような少数エリートと多数派大衆というピラミッド構造は、日本は勿論のことその他の伝統的民族コミュニティに乗っかった近代国家であれば、どこでも同じような構造なのではないでしょうか。ただアメリカだけは、伝統的な民族コミュニティというものに縛られていないということで、国家の構造やあり方が日本を始めとした民族国家とは違っている、ということが書かれています。
「イラク戦争というのも、民族派の親分(ボス)であるフセインの排除という構造だな」
「そう、まさに、民族主義というのは、常に民族の親分を必要とするからな。アメリカというのは、実は国家というよりも会社に近いものなんだ。利益獲得を目的とする集団なんだ。国際派の方法論を強力に推し進めると、抽象的で合理的な共同体運営論になる。イラクのような国家であれば(そこには日本も含まれるでしょう/引用者注)、そこに生まれたものは、どんなに弱くても才能がなくても、民族の一員として国家が面倒を見る。面倒を見るというのは西洋的な福祉の論理ではなくて、存在証明を行いアイデンティティを与えるということだ。その代わりに他民族に対してには排他的になるし、他国から見れば独善的に見える。しかし、それが本来、民族国家というものの普通のスタイルだったんだ。アメリカは会社だから、優秀な人材は外部からどんどん吸収していくが、落ちこぼれは無視していく構造なんだ


以下、引き続き「やきそばパンの逆襲」をネタに、「価値観を共有する日米関係」の欺瞞-本論-4」に続けます。
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by darsana-te2ha | 2007-09-01 01:44 | 日米関係


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