2007年 09月 02日
「価値観を共有する日米関係」の欺瞞-本論-4
 「『価値観を共有する日米関係』の欺瞞-本論-3」からの続きです。

 引き続き「やきそばパンの逆襲」 橘川幸夫著 2004年河出書房新社刊から引用します。

 経済(=カネ)だけが、そのパワーとアイデンティティの源泉になってる構造のアメリカという国家のシンドさ、とアコギさについてを中心に引用しました。

(p76~77より引用)
「そうなんだよ! ハワイがどうしてアメリカの州になったかというと、ハワイにあった白人のプランテーションの経営者たちが武装して軍隊化し、ハワイ先住民のコミュニティを軍事的にのっとってしまったからなんだぜ。もちろんアメリカ本土だって、ネイティブ・アメリカンの大地を軍事的に強奪したわけだからな。これは歴史上のことではなくて、今、中近東でアメリカがやってることは、同じことだ。アメリカは、自らの大地を持たないのだから、民族的国家観なんか、持ちようがない。自由とかいう抽象的な概念しかアイデンティティを主張する根拠がないんだ。それで、ハワイの民族が、なぜ、反乱を起こさないのかというと、アメリカの支配になって、物質的な豊かさが保証されたからだ。だから、逆に言うと、アメリカというのは、永遠に経済活動を成長させていかないと、あらゆるところに反乱の可能性を秘めているという共同体なんだよ。毎年売り上げを前年比以上に高めないと倒産してしまう企業みたいなもんだ。民族国家というのは、たとえ国家経済が破綻しても、民族そのものは残るんだ。(今のイラクを見ればよくわかりますよね。/引用者注)アメリカが経済成長のために、どんな無茶なことをしても国民が合意してしまうのは、自分たちが永遠の高度成長なくしては存在しえない経済民族であることを知っているからだ。日本とは基本的に国家の土台が違うんだから。アメリカと同じ政策なんか本来あり得ないんだよ

 ここで日本の話に戻ります。
(同書p78~79より引用)
「要するに、構造改革と言ってるが、これは明治以来の近代化そのものなんだと思う。構造改革によって、日本は合理的で実力主義の国際社会になるかもしれないが、反面、破壊される内部構造というものも悲惨なものになるだろうね
(中略)
「(小泉内閣の支持率の高さはなぜだったかといえば)日本人というのは、絶妙なバランス感覚があってね。田中派が戦後築き上げた利権構造を崩すには、小泉のようなドライなインテリの力が必要だと思ったんだろう。しかし不幸なことに小泉は壊す意志は強かったかもしれないが、次の構造を築くだけの構想力がなかったんだろうな。田中派(自民旧経世会→平成研究会・津島派/引用者注)にしても、利権構造を守るのに長けた連中は大勢いても、田中角栄のように、ゼロから利権構造を築くようなスケール感のある政治家はいないしな。小泉の失敗に対して揺れ戻しがあったとしても、受け皿の民族派にキャラクターがいないというのが日本の不幸なところだ。……」

 民族派と国際派が自民党内でうまくバランスをとりあって、これまで両者の中間的な政策をとってきてものが、ここにきての民族派たる田中派(旧経世会)の弱体化によってバランスが崩れたなかで、国際派エリートに軸足を置いた清和会が推し進める新自由主義的な政策が前面に出てきてしまったんでしょうね。今回の参院選での小沢民主党の勝利は、民族派大衆からの巻き返しともとれるかもしれませんね(「『価値観を共有する日米関係』の欺瞞-本論-3」から読んでいただくとここいらのことはわかりやすいかもしれません)。

 話を再びアメリカに戻します。勝ち続けてきたエリート国家アメリカと、民族国家である日本との関係についてです。
(同書P80より引用)
アメリカの方法論というのは、日本に無茶な要求をして、それを素直に受け入れて隷属してくれればよし、逆に反発して満(この本の登場人物/引用者注)みたく単純な反米・嫌米になって牙を剥けば、叩き潰す口実になるから、それもよしという、どうやっても勝利以外はない強者の論理なんだ。ただ、このまま行くとアメリカはヨーロッパにおける英国のような同盟関係の意識を日本に要求してくるだろうから、国民は大きな選択を迫られるだろう。アジアの一員として生きるか、アジアの中の国際派の牙城となる道を選ぶかだ。アメリカにとって日本の戦後処理は大成功だったから、イラクも日本と同じように中近東における国際派の拠点にしたいのだろう」
知的植民地政策ってか

 この本が指摘するような国内の民族派大衆と国際派エリートとの対立という視点から見ると、今の安倍首相の志向はどっちつかずで中途半端ですね。私学出身だし、本来なら民族派のリーダーとして行動していけば安倍首相は、それこそ「日本のプーチン」になれたかもしれないのに、祖父・岸信介氏へのコンプレックスが強すぎるのか(笑)、国際派エリートを目指す言動が目立ちます。自分で自分の墓穴を掘ってるとしか思えないんですけどね(笑)。安倍首相のそんな中途半端なやり方ですと、日本の大多数の国民大衆も大きな損失を被ってしまうのではないかと心配になってしまいます。また、エリート国際派の系譜たる旧福田派清和会が選挙で幅広く支持を集めるには、カルト巨大宗教と、“勝ち組”経済界をバックにしたマスコミの大きな助け無しでは難しい、ということなんでしょうか。それもまた今の政府自民党の政策を、多くの国民から乖離した、ねじくれたものにしてるような気がします。


 最後に本論とはちょっとずれた内容ですが、上記の「やきそばパンの逆襲」を読んで思わず笑ってしまったところを引用します(p77より)。
「僕、よくわからないんですけど、アメリカにあれだけ追随してる小泉さんが、なんでアメリカと戦った人たちをまつる靖国神社の参拝に熱心なんですか?」

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by darsana-te2ha | 2007-09-02 16:17 | 日米関係


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