2009年 06月 08日
神門教授による市場上原理主義的な農業政策発言について一言。-1
a0054997_0121754.jpg 先日「SIGHT」という雑誌に掲載されていた神門善久氏という明治学院大学教授(開発経済学、農業経済学)のインタビューを読みました。

 現在の農業に対する政府やマスコミの姿勢への問題提起は良いんですが、一部腑に落ちない内容があったので、今回はそのことをご指摘させていただきたいと思います。
 農業、特に開発途上国における農産物を工業製品と同じ輸出産品として見ることと、そのことから必然的に導かれる農産物の市場原理主義化による負の側面を神門教授は無視し過ぎではないかということです。

SIGHT VOL.40(ロッキングオン刊) P85より
神門 食料自給率問題で盛り上がること自体が病気なんです。たとえば、なぜ途上国のことを考えないのか、ということです。輸入を減らして我々の自給率を上げるということは、日本に輸出していた国の農業は打撃を受けます。しかも、日本人の多くは、欧米産の農産物ではなく途上国産の農産物を減らしたいと考えているはずです。つまり、「途上国の農業なんて潰してもかまわない」という偏狭な発想をしているのです。そういう先進国エゴのほうがよっぽど怖いです。


 長いインタビュー記事のごく一部だけですが、神門教授のお考えのエッセンスだと思われる部分を引用させていただきました。
 さて上記の神門教授のご発言に対して、自分の頭脳や文章能力では充分な反論が出来ないので、当ブログからリンクさせていただいている環境政策をご専門とされ、フィリピンや中国の農村地帯などでフィールドワークをなされてきた関良基拓殖大学助教のブログ記事の引用をさせていただきたく思います。

書評: 『自給再考 -グローバリゼーションの次は何か』(農文協) - 代替案より
たとえばメキシコやグァテマラの先住民族の小規模農業と、ブラジルやアルゼンチンの大規模農業がラテンアメリカ共同体内で競争を強いられることなど、みるも無残な結果しか生み出さないからである。
 工業のような収穫逓増産業は、その確立のためにある程度の規模の大きなマーケットが必要とされる。しかし農林業といった自然生態系に生産条件を既定された収穫逓減産業にとっては広域的マーケットは不要であり、小さな規模での地域循環が持続性の面からもエネルギー効率の面からももっとも合理的なのだ。


 また日本を含めた先進国向けの商品作物の栽培が、途上国の環境や伝統的な共同体に対し破壊的な作用があることもご指摘されております。

国際政治最大のタブー(関税政策)に挑む - 代替案より
いまインドネシアの熱帯林破壊の最大の原因は、油ヤシプランテーションの拡大であり、ブラジルの熱帯林破壊の最大の原因は大豆農園の拡大です。この2か国の熱帯林破壊により、年間11億炭素トンのCO2が排出されており、じつに世界の年間CO2排出の15%を占めるのです。それで、インドネシアやブラジル のヤシ油や大豆油などの植物性油脂を誰が買っているのかといえば、急激に輸入量を増やしているのが中国とインドなわけです。その中国もインドもWTO加盟 以前の1990年は植物性油脂など、すべて国産していました。食用油は、国産の大豆油やナタネ油で自給できていたのです。
 それがWTO加盟による農産物貿易を自由化によって、急激にインドネシアやブラジルのヤシ油や大豆油の輸入量を増やし、中国などすでに日本を抜いて世界一位の大豆輸入国になってしまいました。それがインドネシアやブラジルのさらなる熱帯林破壊につながっているのです。

 それで中国やインドが幸せなのかといえば、そんなことは全くありません。中国の大豆生産農家やインドの菜の花生産農家は、農業を続けてられなくなって困窮化しているのです。インドなどでは、菜の花農家や菜種油の搾油業者などあわせて300万人以上が失業し、路頭に迷ったという試算もあります。

 中国やインドが、再び国内農家の保護政策に転じ、国内農業を保護して大豆油や菜種油を自給するようになれば、国際市場からの需要は減少に転じ、インドネシアもブラジルもこれ以上熱帯林を農地に変える必然性は消えるのです。

 以上のような現実をご理解いていだいた上でも神門教授は
「つまり、『途上国の農業なんて潰してもかまわない』という偏狭な発想をしているのです。そういう先進国エゴのほうがよっぽど怖いです。」
などというオメデタイご発言をなされるおつもりなんでしょうか?
 神門教授の上記のご発言は、経済発展中の途上国への工業製品の輸出を増やしたい経団連あたりの経営者が聞いたら拍手喝さいしてくれそうな内容ではありませんかw。皮肉を込めて書かせていただければ、さすがCIAによるプロパガンダ誌ではないかとまことしやかに噂される週刊新潮(2008.10.8号)に掲載されただけの学者さんって気がしないでもありませんが…w。

 以下神門教授のご発言のうち国内農業についての部分について次回「神門教授によるの農業問題発言について一言。-2」に書かせていただきました。

(太字は全て引用者)

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by darsana-te2ha | 2009-06-08 00:09 | 世界情勢


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